クリニックのホームページ制作、HTMLとWordPressどちらを選ぶべき?

クリニックのホームページを新規で立ち上げたり、リニューアルを検討されたりする際、多くの先生が制作会社から「静的サイトにしますか?動的サイト(WordPress)にしますか?」といった質問をされることがあるかと思います。
この「静的」と「動的」の違いは、制作費用や期間だけでなく、開院後の情報発信や集患戦略に大きく影響する、非常に重要な選択です。制作当初は、制作期間が早く安価な静的サイトが魅力的に感じられるかもしれませんが、開業後に運用が始まると「もっとこうしておけば…」と後悔されるケースも少なくありません。
結論から申し上げますと、私は長期的な視点でクリニックの資産となるホームページを育てるなら、動的サイト(WordPressなどのCMS)での制作を強くおすすめします。
この記事では、制作の現場とマーケティングの両面を知る私の経験から、それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく解説し、なぜ動的サイトがおすすめなのか、その理由を明らかにしていきます。
そもそも「静的サイト」と「動的サイト」って何が違うの?
専門用語を使わずに、それぞれの特徴を簡単にご紹介します。
静的サイト (HTMLサイト)
- あらかじめ作成されたHTMLファイルという設計図通りに表示されるサイト。
- 例えるなら、一枚一枚デザインされた印刷物のようなイメージです。内容を変更するには、設計図そのもの(HTMLコード)を書き換える専門的な知識と技術が必要です。
動的サイト (WordPressなどのCMSサイト)
- 閲覧者のリクエストに応じて、その都度ページを生成して表示するサイト。
- 例えるなら、Wordやブログのように、管理画面から文章や写真を追加・編集できる仕組みです。専門知識がなくても、クリニック側で簡単に情報更新が可能です。
それでは、それぞれのメリット・デメリットを具体的に見ていきましょう。
スピードとコスト重視なら「静的サイト」
「とにかく早く、コストを抑えて公式サイトを立ち上げたい」という場合に選ばれることが多いのが静적サイトです。
静的サイトのメリット
- 制作期間が短い
- CMSの設計や構築が不要なため、比較的スピーディーに制作を進められます。
- 制作費用が安い
- シンプルな構造のため、初期費用を抑えることが可能です。
- 制作後の改修がしやすい
- サイト全体の構造がシンプルなため、デザインの微調整や部分的な修正は比較的行いやすいです。
静的サイトのデメリット:開業後に直面する「更新できない」もどかしさ
- ページ追加や更新に手間と費用がかかる場合がある
- 開業してクリニックの運営が始まると、想像以上に「ホームページで情報を発信したい」という場面が増えてきます。 静的サイトの場合、その更新は原則として自分たちではできず、都度制作会社に依頼する必要があります。
- 最近では、静的サイトでも「お知らせ」部分だけは簡易的に更新できるシステムを導入しているケースもあります。しかし、ここにも落とし穴があります。例えば、週末に急な休診のお知らせを出したくても、制作会社の休業日であれば対応は翌営業日以降になってしまいます。また、依頼が込み合っている場合など、制作会社の作業日数がかかり、反映までに数日待たなければならないことも珍しくありません。 迅速さが求められる情報発信において、このタイムラグは大きなデメリットとなり得ます。
静的サイトは、開院時に最低限の情報を掲載し、その後ほとんど更新する予定がない場合に適しています。
長期的な情報発信とSEO対策なら「動的サイト」
一方で、ホームページを単なるパンフレットではなく、クリニックの価値を高め、集患に繋げるための「メディア」として育てていきたい場合には、動的サイトが最適です。
動的サイトのメリット
迅速な情報更新が可能
休診日のお知らせや新しい治療法の導入など、クリニック側で好きなタイミングでスピーディーに情報発信ができます。土日や深夜であっても、ご自身で即座に更新が可能です。
ページ追加が比較的容易
制作会社との契約にもよりますが、ブログやお知らせといった決められたフォーマット内であれば、ご自身で何ページでも追加することが可能です。
SEO対策(検索エンジン対策)に非常に強い
これが最大のメリットです。例えば、地域の方向けに「〇〇市 糖尿病 専門医」といったキーワードを意識したコラム記事を定期的に投稿することで、検索結果で上位に表示されやすくなります。専門性の高い医療情報を発信し続けることは、患者さんからの信頼獲得と集患に直結します。
動的サイトのデメリット
制作期間が長い
CMSの設計や、将来の拡張性を見据えたサイト構成を考える必要があるため、静的サイトに比べて制作に時間がかかります。
初期費用が高い
CMSの構築費用がかかるため、静的サイトよりも初期費用は高くなります。
ある程度のWEB知識が必要になる
管理画面の操作方法など、最低限の知識は必要になります。しかし、多くの場合、制作会社が納品時に操作方法のレクチャーをしてくれますし、直感的に使えるものがほとんどです。
比較まとめ
| 項目 | 静的サイト (HTML) | 動的サイト (WordPress) |
| 初期費用 | 安い | 高い |
| 制作期間 | 短い | 長い |
| 更新作業 | 制作会社に都度依頼 | クリニック側で可能 |
| 更新の即時性 | 時間がかかる場合がある | スピーディー(24時間365日可) |
| 更新費用 | 都度発生する場合がある | 原則無料(サーバー代等は除く) |
| SEO対策 | 不向き | 非常に強い |
| おすすめのケース | 更新頻度が極端に低い | 長期的に情報発信したい |
【応用編】「いいとこ取り」も可能?部分的なCMS導入
「基本のページはそんなに更新しないけど、お知らせやブログだけは自分で更新したい…」
そんなニーズに応える方法として、サイトの基本構造は静的サイトで作り、ブログやお知らせなど更新頻度の高い部分だけWordPressを導入する「ハイブリッド型」という選択肢もあります。
これにより、全体の初期費用を抑えつつ、情報発信の即時性を確保することが可能です。ご自身のクリニックの運用方針に合わせて、このような柔軟な構成も検討してみると良いでしょう。
クリニックのWEBサイトは「育てる」資産
開設当初は、診療やクリニックの運営で手一杯かもしれません。そして、コストやスピードの面から静的サイトが非常に魅力的に映るのも事実です。しかし、クリニックの運営が軌道に乗ってくると、必ず「もっと手軽に、スピーディーに情報を発信したい」というニーズが出てきます。
その時に「制作会社の営業日まで待たないといけない」「更新に費用がかかる」という状況は、大きな機会損失に繋がる可能性があります。
ホームページは一度作って終わりの「パンフレット」ではありません。地域の患者さんにとって有益な情報を発信し続けることで、信頼を積み重ね、クリニックの価値を高めてくれる「資産」へと育っていきます。
短期的なコストを重視し、最低限の情報を載せられれば良い → 静的サイト
長期的な視点で集患に繋げ、クリニックの資産として育てたい → 動的サイト(WordPress)
これから開業される先生、リニューアルを検討されている先生は、目先のコストや制作期間だけでなく、「このホームページで5年後、10年後どうなっていたいか」という長期的な視点を持って、最適な制作方法を選んでいただければと思います。

